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  • Writer's pictureHiroshi Goto

ソーシャル・セキュリティ:投資と見立てた場合の収益率は?

ソーシャル・セキュリティは賦課方式(現役世代の掛金をリタイア世代の給付に回す財政の仕組み)を基本としているので、積み立てた資金を投資してリタイア後に取り崩しているわけではありません。とは言え、個人から見たら、現役時代に掛金(ソーシャル・セキュリティ税)を払い、リタイア後に見返りとして年金給付を受け取っていると考えることができます。これを投資として見立てた場合、何%ぐらいの収益率になるのでしょうか。



ソーシャル・セキュリティの投資収益率

 

 

投資収益率を計算する

掛金を年金給付で回収するのに何年ぐらいの期間がかかるかについては、「ソーシャル・セキュリティ vs. 厚生年金:どちらが得か」でまとめました。投資回収期間の考え方には、掛金(投資)と給付(回収)が始まるまでの時間の長短が考慮されていません。22歳の時の掛金も66歳の時の掛金も、受給開始以降にかかる回収期間は同じです。

 

一方、投資として考えた場合、45年後に回収できるのか、1年後に回収できるのかは、収益率に大きな影響を与えます。具体的に見てみましょう。

 

インフレ(ソーシャル・セキュリティ:給付額に物価上昇を反映する仕組み)を除く実質では、もし$10,000の所得があれば、22歳の時であれ、66歳の時であれ、所得があった年に$1,240のソーシャル・セキュリティ税(労使合計)を支払い(マイナスのキャッシュフローとなり)、標準受給開始年齢(67歳)以降に毎年$257ドルの給付(プラスのキャッシュフロー)をもたらします(AIME*が$1,174以下(2024年)の場合)。グラフにすると以下のようになります。


掛金と給付のキャッシュフロー

*AIMEは最も所得が高い35年の月次平均所得。詳しくは「ソーシャル・セキュリティ給付の算定基礎となるPIA(Primary Insurance Amount)とは」をご覧ください。

 

このキャッシュフローをもとに投資収益率(Internal Rate of Return)を計算すると、22歳で支払った掛金は2.5%(22歳から85歳までの年率)、66歳の掛金は20.0%(66歳から85歳までの年率)になります(インフレを除いた実質利回り、67歳受給開始、寿命85歳)。さらに一人の所得実績に基づいて配偶者年金(所得実績のある配偶者の50%)も受け取れることができれば、投資収益率はアップします。


この投資収益率(各年齢から85歳までの年率)を各年齢の掛金について計算すると、以下のグラフのようになります。


投資収益率の推移 AIME$1,174以下

ただし、これはAIMEが$1,174(2024年)以下の場合で、生涯累計所得が$493,080($1,174 x  420か月)を上回った部分は、AIME $1,174超$7,078以下の低いPIA換算率(32%)となるため、各年齢の掛金における投資収益率は以下のグラフのように低くなります。


キャリア初期(生涯累計所得が$493,080になるまで)は上のグラフがあてはまりますが、キャリア中盤以降では下のグラフがあてはまる人が多いでしょう(AIME $7,078超=生涯累計所得$2,972,760超では、PIA換算率は15%で投資収益率はさらに低くなります)。


投資収益率の推移 AIME $1,174超$7,078以下

 

債券・株式投資との比較で考える

インフレを除く実質利回りを債券が2%、株式が5%として考えてみましょう。そうすると、投資収益率2%は債券100%、3.5%なら債券50%:株式50%、5%なら株式100%のポートフォリオに投資するのと同等と考えることができます。


ソーシャル・セキュリティ(老齢年金+配偶者年金)を投資に例えるなら、20代(AIMEが$1,174以下)から50代(AIME $1,174超$7,078以下)の掛金は総じて債券や株式と遜色ない、60代以降(AIME $1,174超$7,078以下)では、株式を上回るかなり割の良い投資と言えます。


ソーシャル・セキュリティには債券・株式のポートフォリオのように時価変動リスクや投資コストはありませんが、受給資格者が早世することや財政問題が解決しないこと(ソーシャル・セキュリティ:2034年に積立金が枯渇?)はリスク要因です。

 

60代の投資収益率の上昇幅がかなり大きいので、受給開始が近くなってからの掛金は投資効率が特に高いです。その点では、もし所得履歴が35年未満なら、1年でも2年でも、パート・タイムでもいいので働き続けて、ソーシャル・セキュリティ税を納めるのは良い投資と考えられます。

 

貯蓄率が低いアメリカでは、若いうちから強制的にリタイア後の備えとして掛金を払わせるのは、制度としても合理的と言えるのではと思います。

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