ソーシャル・セキュリティ:繰り下げ受給の投資収益率は?
「ソーシャル・セキュリティ:投資と見立てた場合の収益率は?」でソーシャル・セキュリティのキャッシュフロー(掛金と給付)から投資収益率を計算してみました。同じ考え方を繰り下げ受給に対して当てはめることもできます。繰り下げ受給は、本来受け取れたであろう年金を繰り延べて(マイナスのキャッシュフロー)、将来的に年金の増額分を受け取る(プラスのキャッシュフロー)ことだからです。
繰り下げ受給した場合のキャッシュフロー
まず繰り下げ受給した場合のキャッシュフローを標準受給開始年齢との比較で考えます。具体的な例で見てみましょう。単純化のために、老齢年金だけを対象とします。
Primary Insurance Amount(PIA)2,000ドル、標準受給開始年齢を67歳とします。すると、標準受給開始年齢で受給開始した場合、年間24,000ドルを生涯受給できます。68歳に繰り下げた場合は年間25,920ドル(PIAの108%)、69歳では27,840ドル(PIAの116%)、70歳では29,760ドル(PIAの124%)となります。表にすると以下の通りです。
青字にしたところが、67歳受給開始との比較での繰り下げ受給によるキャッシュフロー(物価調整前)です。
投資収益率の計算
このキャッシュフローをもとに各年齢までの投資収益率(物価上昇を除く実質、67歳から各年齢までの年率)を計算したのが下表です。比較のために、67歳受給開始との受け取り年金差額累計も載せました。
長生きすればするほど、繰り下げ受給の方が有利になるのは投資収益率で見ても、67歳受給開始との差額で見ても同じです。
インフレを除く実質収益率を債券が2%、株式が5%として考えてみましょう。そうすると、投資収益率2%は債券100%、3.5%なら債券50%:株式50%、5%なら株式100%のポートフォリオに投資するのと同等ということになります。85歳以降になると、少なくとも債券と株式のミックスのポートフォリオ、もしくはそれ以上の投資収益率になるのが分かります。
85歳(もしくはそれ以降)の投資収益率を見ると、大きい順に68歳受給開始、69歳受給開始、70歳受給開始がとなっています。一方、受給額差額累計は大きい順に70歳受給開始、69歳受給開始、68歳受給開始と逆になっています。これは、68歳受給開始より70歳受給開始の方が長く繰下げすることにより投資収益率の計算上不利になる一方、より大きな金額(一つ目の表を参照)を繰り延べ(投資)しているので年金増額の累計は大きくなることに由来します。
67歳受給開始との比較でのキャッシュフローを見た場合、繰り下げ受給の判断は、最大寿命の想定、率(投資収益率)を重視するか金額(年金受取額累計)を重視するかで異なってくるでしょう。