アニュイティの基本
アニュイティ(Annuity)は、日本で言うところの個人年金保険です。様々なタイプの商品があり、中にはとても複雑な商品もあります。今回の記事では、アニュイティの基本的な商品性を概観してみましょう。
商品性の分類
いくつかの観点でアニュイティの商品性を分類することができます。
保険料の支払い方法
一時払い(Single Premium)
定期払い(Periodic Payments)
年金支払いの始まる時期
即時年金(Immediate Annuities)
据置年金(Deferred Annuities)
年金額または口座残高の固定または変動
定額年金(Fixed Annuities)
指数連動年金(Index Annuities)
変額年金(Variable Annuities)
よくある即時年金は、一時払いのもので(Single Premium Immediate Annuities、SPIA)、保険料を一時払いした後にただちに年金の支払いが始まるものです。一定期間後に支払いが始まるものは据置年金(Deferred Annuities)です。
年金額が一定の利率で保証されているタイプは、定額年金(Fixed Annuities)です。指数連動年金(Index Annuities)は、S&P500などの株式指数に連動しますが、多くは指数連動の上限(Cap)や参加率(Participation Rate)の設定がある代わりに、元本が保証されています。変額年金(Variable Annuities)は、加入者の口座の中でミューチュアル・ファンドに投資するもので、元本保証はなく、アニュイティの中では市場変動リスクが大きいタイプです。
この他にも、下記項目などで様々な設計があります。
解約可能期間と解約手数料(Surrender Charge)
年金の支払い方法
定期または終身
保証期間(Period Certain)の有無
単独の被保険者か夫婦連生(Joint and Survivor)か
終身年金保証(Guaranteed Lifetime Withdrawal Benefit、GLWB)や最低死亡保険金保証(Guaranteed Minimum Death Benefit、GMDB)の付帯条項
アニュイティに関する税金
Traditional 401(k)やTraditional IRAで購入されたアニュイティについては、口座から受け取った年金額がその年のOrdinary Incomeに加算され、課税対象になります。
Roth 401(k)やRoth IRAで購入されたアニュイティについては、受け取った年金額は課税されません(払込保険料は所得税課税後、Roth口座の利益は非課税のため)。
通常の(所得税課税後の)資金で購入されたアニュイティについては、払込保険料を超えて受け取った年金額について、利益としてOrdinary Income(課税対象)になります。課税額の計算方法は、年金種類や受け取り方法によって異なります。
アニュイティの税務上有利な点としては、401(k)やIRAなどの税制優遇口座以外の通常資金で購入した場合でも、年金の中で累積する利益に対する課税が、実際に年金を受け取る時まで繰り延べられることです。そういう意味では、401(k)やIRAなどの税制優遇口座の外で、リタイア後のための資金を年金化したい時には、メリットがあるかもしれません。
アニュイティを検討する際のチェック・ポイント
アニュイティを検討する際は、換金性、コスト、商品の複雑性についてよく検討しましょう。
換金性は、解約できる時期と解約できない時期、解約する場合の手数料(Surrender Charge)、手数料なしで解約可能な金額などについてよく把握しておきましょう。
コストについては、明示的なコストと目に見えないコスト(明示されずに加入者が負担しているコスト)があります。一般的には商品の複雑性が増すほど、保険会社がその仕組みを提供することに伴う、目に見えないコストも大きくなります。したがって定額年金より、指数連動年金、変額年金、さらに複雑な付帯条項がつくほどコストは高くなる傾向があるでしょう。
アニュイティは、保険になじみのある日本人には比較的受け入れやすい金融商品かもしれません。ただし、その商品性は複雑でコストが不透明な場合があるので、明確な購入目的に沿って、良い選択をしたいものです。