資産運用:課税区分が異なる口座を使い分けるポイントとは
Updated: Jul 2
アメリカでも日本でも、「一般の証券口座」、「所得税課税前で拠出・運用できる口座」、そして「拠出は所得税課税後で運用益は非課税の口座」があります。フィナンシャル・プランニングの中では、株式や債券に資産を配分することをAsset Allocation(資産配分)というのに対して、どの資産をどの口座で保有するか決めることをAsset Locationといいます。今回の記事では、課税区分の異なる口座をうまく使い分けるポイントについて説明します。
課税区分による口座の分類
まず以下のように、課税区分によって口座を大きく三つに分類しました。「課税口座」には特段制限はありませんが、税制メリットのある「課税繰延口座」、「運用非課税口座」には通常、拠出時の金額制限や引き出し時の年齢制限、期間制限などがあります。
課税繰延口座
運用するにあたって最も有利な口座は、課税繰延口座でしょう。所得税課税前で元本を拠出でき、運用益も非課税です。運用期間が長ければ長いほど複利効果が期待でき、課税繰延メリットも大きくなります。また引き出しタイミングを自分で決められるので、所得が低い年に引き出すなど、なるべく課税が発生しない工夫をすることも可能です。
デメリットは引き出しに年齢制限があり、アメリカの401(k)、IRAなどは59.5歳、日本のDCは60歳以上での引き出しが基本です。教育資金や住宅購入資金など、それまでに引き出しが見込まれるような使途には一般的に不向きでしょう。
運用非課税口座
運用非課税口座のメリットも見過ごすことはできません。やはり運用期間が長ければ長いほど、運用益非課税の税制メリットは大きくなります。
アメリカのRoth 401(k)/IRAは、ペナルティなしで引き出すためには、最初に拠出した年(の1月1日)から5年以上経過し、59.5歳以上であるなどの条件を満たす必要があります。ただし、Traditional 401(k)/IRAと違って、Roth 401(k)/IRAにはRequired Minimum Distribution(RMD)がないので、不要不急の資産をRMDのために引き出す必要がないという優位性があります。
日本のNISA(含む新NISA)は引き出しに制限がないので、様々な目的の資産形成に使うことができる仕組みです。
Asse Locationの一般論
資産配分(Asset Allocation)が、例えば
株式(含む株式ファンド)60%
債券(含む債券ファンド)30%
短期金融商品(MMF、CDなど)10%
と決まっていたとしましょう。その場合、以下のようなAsset Locationの一般論が言えます。
運用期間が長ければ長いほど、また、投資資産に期待できるリターン(収益)が大きければ大きいほど、課税繰延口座や運用非課税口座の税メリットが大きくなります。したがって、長期で期待できる収益が相対的に大きい株式は、課税繰延口座や運用非課税口座で保有するのが有利です。一方、相対的に期待できる収益が小さい債券、短期金融商品は、課税口座で保有するのに向いています。
ただ、口座区分間の資金移動は柔軟にできないので、可能な範囲で税効果が高くなるように口座ごとの保有資産に配慮しましょうという趣旨です。課税繰延口座や運用非課税口座で債券・短期金融商品を保有してはいけないとか、課税口座で株式を保有してはいけないということではありません。
これはアメリカで言えることですが、税効果という点では、課税口座では、Mutual FundよりETFをなるべく使うといいでしょう。Mutual FundよりETFの方が、分配金課税による非効率性(運用ロス)が小さいからです。分配金に課税されない課税繰延口座や運用非課税口座では、Mutual FundとETFどちらでも構いません。Mutual FundとETFの分配金課税による運用効率性の違いは、アメリカの税制に起因するもので、別の記事で取り上げたいと思います。
Asset Locationに関連するトピックとして、リタイア後に課税口座、課税繰延口座、運用非課税口座があった時に、資産を引き出す順番はどう考えたらいいのかというものがあります。ここでは原則論にとどめますが、課税口座、課税繰延口座、運用非課税口座の順になります。なぜそうなるのか。これもまた別の記事でまとめたいと思います。
個々のケースは往々にして、一般論、原則論で片付くほど単純ではありません。当社では、Asset Locationも考慮した総合的なリタイアメント・インカム・プランニングを承っております。お気軽にお問い合わせください。