メディケアの基本
Updated: Mar 7
メディケア(Medicare)は、65歳以上の人、および障がい者を対象とした医療保険制度です。今回の記事では、メディケアの基本事項についてまとめました。
制度概要
メディケアは医療費を補助する目的で作られていますが、すべての医療費をカバーするわけではありません。特にLong-term careといわれる介護については、ほとんどカバーしません。
メディケアは1965年7月に始まりました。2021年時点で、65歳以上の人63.8百万人、障がい者8.3百万人に医療保険を提供しています
ソーシャル・セキュリティとともに、FICA*給与税の一部(2.9%労使折半)がメディケアの運営に充当されています。自営業者も同様の税(2.9%)をSelf-Employed Contributions Actの下で支払っています。また所得が高い人は、さらにAdditional Medicare Tax(0.9%)やNet Investment Income Tax(3.8%)を支払っており、メディケアの原資になっています。
*Federal Insurance Contributions Act
月次の保険料もメディケアのコストを賄うために充てられ、ソーシャル・セキュリティを受給している人は、通常給付から天引きされます。ソーシャル・セキュリティをまだ受給開始していない65歳以上の人は、メディケアの保険料を別途支払う必要があります。
メディケアの管轄官庁はCenters for Medicare & Medicaid Servicesですが、手続きはSocial Security Administrationが行います。
なお、低所得の人に医療保険を提供するメディケイド(Medicaid)は、州によって運営される別の制度です。
メディケアの構成
メディケアは、カバレッジの異なる4つのプログラムから構成されます。Part AおよびBはメディケアの中核で、ともに連邦政府によって運営され、オリジナル・メディケアと呼ばれます。
Medicare Part A-Hospital Insurance
病院や高度看護施設(skilled nursing facility)に入院した場合の部屋、食事、治療費をカバーします。また、一部の在宅医療やホスピス・ケアも含まれます。
Medicare Part B-Medical Insurance
医者などの医療従事者による治療、医療器具、予防的ケアの費用をカバーします。
Medicare Part C-Medical Advantage Plans
民間保険会社が提供する医療保険で、Part AおよびBの保障内容を含みます(Part A/Bを代替)。アドバンテージ・プランのネットワークには、Health Maintenance Organizations (HMOs)、Preferred Provider Organizations (PPOs)などがあります。Medicare Part Dや、オリジナル・メディケアがカバーしないVision、Hearing、Dentalを含むプランもあります。
Medicare Part D-Prescription Drug Plans (PDPs)
民間保険会社が提供し、処方箋による医薬品代をカバーします。
加入資格
米国市民権、永住権を持つ人は、次の4つの加入条件のうち一つを満たし、かつ就労期間(メディケア税を納めた期間)が10年以上あれば、Part Aに保険料なしで加入することができます。就労期間が10年にに満たない場合でも、保険料を払えばPart Aに加入することができます。
[ 加入条件 ]
年齢:65歳以上
65歳になる前の障がい
ルー・ゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症、ALS)
末期腎不全
保険料
Medicare Part A-Hospital Insurance
10年以上の就労期間(メディケア税を納めた期間)があれば、保険料は無料です。10年に満たない場合でも、保険料を払うことで加入できます。2024年の月次保険料は、就労期間7.5以上10年未満で$278、7. 5年未満で$505です。なお、Part Bにも加入すること、5年以上アメリカ在住であることが条件になります。
Medicare Part B-Medical Insurance
2024年の標準的な月次保険料は、$174.70です。独身申告で所得(2年前のMAGI)が$103,000超、夫婦合算申告(同)で$206,000超の人は、保険料が上がります。
Medicare Part C-Medical Advantage Plans
ほとんどのプランに月次保険料があります。
Medicare Part D-Prescription Drug Plans (PDPs)
プランによって保険料は異なります。自己負担割合は、1年の中でステージ(かかった医薬品代累計)が進むごとに変わります。
Deductible Period-自己負担100%
Initial Coverage Period-同25%
Coverage Gap-同25%
Catastrophic Coverage Period-同0%
メディギャップ・プラン(メディケア・サプリメント)
多くの民間保険会社が、メディケアのカバレッジを補完したメディギャップ・プランを提供しています。これらは、アルファベットの記号を使った10種類の商品分類(Medicare.govの比較ウェブページ)に標準化されています。全てのメディギャップ・プランは、次の基本的な保障を含みます。
Part A hospital coinsurance
Part B coinsuranceまたはcopay
最初の3パイントの輸血
Part A hospice care coinsuranceまたはcopay
(Deductibleは保険支払いが始まる前の自己負担金額、CoinsuranceはDeductibleを超えた後の自己負担割合、Copayは医療サービスを受けるたびに支払う自己負担金額)
Medicare.govは、地域ごとに入手可能なメディギャップ・プランを検索できる下記サイトを提供しています。
これらのメディギャップ・プランがPart A、Bを補完しようとしている保障には、以下のものがあります。
Part AのDeductibleは入院期間ごとで、複数回の入院でDeductibleが高額になりうること
長期入院による自己負担で、費用が高額になりうること
メディケアには、自己負担の年間および生涯の上限がないこと
メディケアの加入申請
メディケアは自動で加入する場合と、自ら加入の申請をしなければならない場合があります。
65歳時点ですでにソーシャル・セキュリティを受給している場合や、障害年金を受給して24か月経っている場合は自動加入となります。
自ら加入申請する場合には、3種類の申請期間があります。
65歳より前に退職している方-Initial 7-month Enrollment Period
65歳の誕生月の前後7か月
65歳時点で働いていて勤務先提供の保険に入っている、または配偶者が勤務先から提供されている保険に入っている方-Special Enrollment Period
勤務先提供の保険を外れた翌月からの8か月
上記以外-General Enrollment Period
毎年1月1日から3月31日で、カバレッジは申請した月の翌月1日から始まります。1年加入が遅れるごとに、Late Enrollment Penaltyとして保険料が生涯10%上がります。
メディケアの適切な加入時期については、65歳になる前にSocial Security Administrationまたは勤務先に確認することをお勧めします。