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米国出国税:よくある質問(永住権放棄手続き等)

米国出国税の概要について「日本への永住帰国:米国出国税の概要」でまとめました。今回の記事では、米国出国税に関連して、永住権放棄手続きなどよくある質問に回答します。


Q1. 永住権放棄はどのような手続きですか。永住権を放棄したとみなされる日付はいつですか。

Q2. 永住権放棄に関連して、税務上の手続きは必要ですか。

Q3. 日本に帰国後、永住権を放棄しました。米国のTax Returnはどうなりますか。

Q4. 出国税の対象(Covered Expatriate)になる条件の一つ「永住権等放棄時の純資産額が200万ドル以上であること」の純資産は、どのように計算しますか。

Q5. 市場時価がない不動産については、鑑定評価が必要ですか。

Q6. 資産が共同所有(Joint Ownership)の場合はどう配分したらよいですか。

Q7. 米国に居住する前から保有していた資産のキャピタルゲインを計算する際の取得価格には、何を用いたらよいですか。


米国出国税:よくある質問(永住権放棄手続き等)

Q1. 永住権放棄はどのような手続きですか。永住権を放棄したとみなされる日付はいつですか。


永住権を放棄するには、Form I-407(Record of Abandonment of Lawful Permanent Resident Status)とグリーン・カードをUS Citizenship and Immigration Services(USCIS)に送付します。


その後、USCISより手続き完了のレターが送られてきますので、そのレターに記載されている日付が永住権放棄の日付になります。この日付は、米国出国税の対象(Covered Expatriate)かどうかの判定、課税額計算に用いられます


グリーンカードが失効していても、この手続きをしない限り、永住権を放棄したことにはなりません。



Q2. 永住権放棄に関連して、税務上の手続きは必要ですか。


長期居住者(米国永住権の保有者でその放棄前15年のうち8年(数え年)以上米国の永住権を保有していた人)の場合、永住権放棄した年のTax Returnの期限(翌年の4月15日)までにForm 8854(Initial and Annual Expatriation Statement)を提出する必要があります。


永住権放棄した年にIRSがForm 8854を要求するのは、米国出国税の対象(Covered Expatriate)かどうかの判定、課税額の計算などのためです。


長期居住者でない場合(放棄前15年のうち米国の永住権を保有していた期間が8年(数え年)未満)、Form 8854の提出は必要ありません。


なお、米国出国税の対象(Covered Expatriate)になった場合、永住権放棄した年の翌年以降も、Form 8854の提出が必要になる場合があります。


Form 8854の不提出、虚偽記載はペナルティ($10,000)の対象になる場合があります。



Q3. 日本に帰国後、永住権を放棄しました。米国のTax Returnはどうなりますか。


米国居住者期間(永住権を放棄するまで)は全世界所得、米国非居住者期間(永住権放棄後)は米国源泉所得のみ申告・納税対象となります。


永住権を放棄した年はDual-Status Taxpayerと呼ばれ、Tax Returnは非居住者用のForm 1040 NRを使用します。長期居住者(Q2参照)はForm 8854をForm 1040 NRに添付します。


Dual-Status Taxpayerの年は、既婚者でも夫婦合算申告(Married Filing Jointly)は利用できず、夫婦分離申告(Married Filing Separately)をします。したがって、累進税率の上がり方が単身者申告と同様に早くなります。


[ 所得税の累進税率(Income Tax Rates & Brackets)]

所得税の累進税率(Income Tax Rates & Brackets)

またこの年は、米国居住者期間を含め、標準所得控除(Standard Deduction)は利用できません。


[ 標準所得控除(Standard Deductions)]

  • 単身(Single)および夫婦分離申告(Married Filing Separately)$15,000

    65歳以上または盲目の単身者には、$2,000加算(65歳以上かつ盲目の場合は$4,000加算)

  • 夫婦合算申告(Married Filing Jointly)$30,000

    65歳以上または盲目の既婚者には、1人あたり$1,600加算(65歳以上かつ盲目の場合は$3,200加算)


したがって、Dual-Status Taxpayerの年は課税所得計算上不利に働くことが多いので、そのような場合には、全世界所得が対象になる米国居住者期間を短くすべく、永住権放棄を年頭に行うといったプランニングが大切になります。



Q4. 出国税の対象(Covered Expatriate)になる条件の一つ「永住権等放棄時の純資産額が200万ドル以上であること」の純資産は、どのように計算しますか。


以下のForm 8854の2ページ目にあるように、総資産から負債を引いたものが純資産(Net Worth)です。

Net Worth Test


Q5. 市場時価がない不動産については、鑑定評価が必要ですか。


鑑定評価は必要なく、Good faith estimateでよいとされています。つまり、近隣類似物件の取引事例などを用いた見積りでよいでしょう。参考にした情報は保存しておきましょう。



Q6. 資産が共同所有(Joint Ownership)の場合はどう配分したらよいですか。


共同所有者の間で均等に配分します。



Q7. 米国に居住する前から保有していた資産のキャピタルゲインを計算する際の取得価格には、何を用いたらよいですか。


キャピタルゲインは通常、売却価格-取得価格で計算されます(注:減価償却がある資産の場合には、取得価格から減価償却後の簿価を用います)。


米国に居住してから取得した資産は、その際の取得価格(または減価償却後の簿価)を用います。


米国に居住する前から保有していた資産の場合、もともと当該資産を取得したときの価格か、米国の居住者になった際の市場時価(Fair Market Value)の高いほうを用いてよいとされています(Step-up Basis)。したがって、米国に居住する前に発生していた未実現キャピタルゲインは、出国税の対象外になります。


Form 8854のUS Adjusted Basisには、このStep-up Basisを用います。

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