リタイアしてフルタイムで働くことはなくなったとしても、パートタイムの仕事を続けることはよくあることです。また、週5日から週4日や3日の勤務スケジュールに移行して徐々に仕事を減らしていくということもあるでしょう。この時、ソーシャル・セキュリティを繰り上げ受給すると、所得テスト(Earnings Test)による減額があるかもしれません。所得テストは、受給者が十分に認識していないルールの1つです。この記事では、所得テストの概要、適用条件、減額の仕組みについて詳しく説明します。
所得テスト(Earnings Test)とは
所得テストは、標準受給開始年齢(FRA)前にソーシャル・セキュリティを繰り上げ受給していて、かつ一定の労働所得がある場合に、ソーシャル・セキュリティを減額する制度です。具体的には、以下の通りです。
62歳からFRAに達する前年:23,400ドル(2025年の基準額。賃金インデックスに連動して毎年改定)を超える労働所得2ドルに対して1ドル減額
FRAに達する年:62,160ドル(同上)を超える労働所得3ドルに対して1ドル減額
FRA後は減額なし
労働所得は、雇用による所得(W-2賃金)と自営業者(Self-employed)の事業所得(Schedule C)が該当し、金融所得、不動産所得、年金、IRAからの引き出し等は労働所得にあたりません。
例えば、62歳の人がソーシャル・セキュリティを繰り上げ受給しながら、労働所得35,400ドルを得たとします。この場合、23,400ドルを上回る12,000ドルに対して半額の6,000ドルが減額となりますので、月々のソーシャル・セキュリティが500ドル減ることになります。この人がFRAに達する年は、労働所得35,400ドルが62,160ドルを下回るため、減額はなくなります。もし、FRAに達する月の前月までに62,160ドルを超える労働所得を得ていたら、労働所得3ドルに対して1ドル減額となります。
良いニュースとしては、この所得テストによる減額は、FRA後の受給額が増えることによって埋め合わされるということです。つまり、FRA後は所得テストによる減額がなくなるだけでなく、減額された期間に応じてFRA後の受給額が一生涯増額されます。
繰り上げ受給開始の初年度は要注意
繰り上げ受給を開始する年は、減額がより厳しく、注意が必要です。繰り上げ受給を開始する年は、受給が1年未満になることが多いので、月次単位で所得テストを判定します。具体的には、23,400ドル(62歳からFRAに達する前年)、62,160ドル(FRAに達する年)を月次に換算した1,950ドル、5,180ドルが判定基準になります。この基準額を当該月の労働所得が少しでも上回ると、その月のソーシャル・セキュリティはゼロになってしまいます。
さらに自営業の場合は、労働時間による規定もあり、1か月あたり45時間(高いスキルを要する職業(highly skilled occupations)の場合15時間)を超えて働くと、その月のソーシャル・セキュリティはゼロになります。
最後に
実際の減額は、実際に労働所得を得た年の翌年のソーシャル・セキュリティから行われることが多いです。ソーシャル・セキュリティ・アドミニストレーションが報酬履歴のデータを取得するのに時間差があるからです。したがって、所得テストを知らない場合、ソーシャル・セキュリティが翌年に減額されて初めてその存在に気がつくこともありえます。繰り上げ受給をしながら仕事をする場合、あらかじめ所得テストの適用条件、減額の仕組みをよく理解しておくことが大切です。
当社では、所得テストによる減額も含めて、様々な受給開始年齢による受給額シミュレーションをもとにしたリタイアメント・インカム・プランニングを承っております。