アーリー・リタイア:健康保険の選択肢とは
アメリカで現役の人々が予想するリタイア年齢の中央値は65歳であるのに対して、実際の平均的なリタイア年齢は62歳だそうです(出所:Employee Benefit Research Institute)。予想と現実のギャップについて、経済的にリタイアできたからと答えた人が35%だった一方で、健康上の理由(35%)、会社都合(31%)もありました。
メディケアに加入できる65歳より前にアーリー・リタイヤメントする場合、健康保険にはどのような選択肢があるのでしょうか。健康保険は州や年齢によっても異なりますが、月額で$2,000前後となることも珍しくありません。さらに、Deductibles(保険支払いが始まる前の自己負担金額)やCopay(医療サービスを受けるたびに支払う自己負担金額)、Coinsurance(Deductiblesを超えた後の自己負担割合)による自己負担もあります。
ここでは、自身がアーリー・リタイヤし、独身または配偶者も働いていない(勤務先から提供される健康保険がない)ケースを考えてみましょう。
COBRAカバレッジ
まず、勤務先で提供されている健康保険について、退職後も最大18か月加入を継続することができます。Consolidated Omnibus Budget Reconciliation Actによるもので、通称COBRAです。ただし、勤務先が負担していたコストもすべて自分で負担しなければいけないので、非常に高額となります(さらに2%の管理手数料もかかります)。
Kaiser Family Foundationによれば、2023年の平均的なCOBRAのFamily coverage保険料(管理手数料2%含む)は年間$25,000程度で、従業員が在職時に平均的に負担する$6,575の約4倍です。
良い点としては、医療機関のネットワークをそのまま使えるので、かかりつけの病院を継続できることです。また、年央で退職し、年間のDeductibleをある程度自己負担している場合、新しい保険に入りなおすより、COBRAで継続した方が有利な場合があります。
ACAカバレッジ
COBRAは一時しのぎには良いですが、長期的なカバレッジではありません。また、低中所得の家計の場合、COBRAよりAffordable Care Act(ACA)、いわゆるオバマケアによるカバレッジの方が正味のコストは低くなるでしょう。Premium Tax Credit(税額控除)という形で、政府の助成が受けられるからです。
どのぐらいの金額の助成が受けられるかは、こちらのサイトで試算ができます。
例えば、StateはUS Average、2024年所得が$60,000、夫婦2人(ともに60歳)と入力すると、Estimated Financial Help(政府の助成)が月額$1,459で、正味コスト(シルバー・プラン)は月額$567という結果となりました。
ACAの保険は、こちらのサイトに基礎情報を入力することにより、検索・比較することができます。
ACAの保険には、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナがあり、順を追ってカバレッジがよくなり、保険料も上がります。保険料がコストのすべてではなく、DeductiblesやCopay、Coinsuranceもありますので、それらやout-of-pocket maximumをよく確認して選びましょう。また、自分の既往症やかかりつけの医療機関、使用している処方薬がカバレッジの対象になっているかも大切なポイントです。
ACAが素晴らしい点は、既往症によって加入を拒否されたり、加入後の支払いが却下されることがないことです。そのため、仮に不動産や証券投資などの不労所得が高く、Premium Tax Creditが受けられない場合でも、ACAが現実的な選択肢となります。
自営業には健康保険料の所得控除も
自営業(Self-Employed)に限られますが、Self-Employed Health Insurance Deductionというものがあり、健康保険料を自営業の所得から控除できます。リタイア後に自身でスモール・ビジネスを行う場合には、Self-Employed Health Insurance Deductionも健康保険料の負担を軽減する一助となるでしょう。
まとめ
2010年に施行されたオバマケア(ACA)によって、アメリカの健康保険は各段に加入しやすくなりました。とはいえ、日本に比べればトータル・コスト(保険料とその後の支払い医療費)や一診療あたりのコストは高く、日本のように気軽に診察を受けられるというわけではありません。ACA Marketplaceをうまく利用して、自分にあった保険に入りたいものです。