離婚後に配偶者年金(Spousal Benefits)や遺族年金(Survivor Benefits)を受け取るには、婚姻期間による条件があります。また、法的な婚姻をしていない事実婚の場合、配偶者年金・遺族年金を受給する資格はあるのでしょうか。今回の記事では、こういった婚姻とソーシャル・セキュリティの関係について見てみます。
婚姻期間の条件
まず婚姻しているケースでは、配偶者年金は1年以上、遺族年金は9か月以上の婚姻期間が必要になります。
次に、離婚しているケースでは、元配偶者との婚姻期間が10年以上必要です。また、配偶者年金の場合は独身(未婚)であること、遺族年金の場合は受給資格(Eligibility)が発生する年齢より前に再婚していないことも条件になります。遺族年金の受給資格が発生する年齢は、60歳(障がい者の場合は50歳)です。当該年齢以降の再婚は、受給資格に影響ありません。
配偶者年金は通常は所得実績のある(元)配偶者が老齢年金を受給開始していることが条件になりますが、離婚後2年経過していれば、元配偶者の受給開始とは関係なく、個別に配偶者年金を受給開始できます。
離婚しているケースで年金を請求する場合には、ソーシャル・セキュリティ・アドミニストレーションに元配偶者の氏名、社会保障番号(わかる場合)、生年月日、生誕地、婚姻証明、離婚判決といった情報・書類が求められます。詳しくはこちらをご参照ください。
事実婚(Non-Marital Legal Relationships)の場合
アメリカでは婚姻は州の管轄であり、ソーシャル・セキュリティに関して事実婚(同性婚含む)も婚姻と同等と認められるかどうかは州によって異なります。ソーシャル・セキュリティ・アドミニストレーションは、「もし一方のパートナーが遺言を残さずに他界した場合、その州の法律の下でもう一方のパートナーが財産を相続することができるかどうか」を確認します。当該州では配偶者として遺産相続ができる関係にあれば、婚姻と同等とみなされ、配偶者年金、遺族年金の受給資格が認められます。
婚姻と同等の関係と認められた場合は、先に述べた婚姻期間の条件を満たす必要があります。したがって、いつ事実婚関係が始まったかを示せる必要があります。例えば、カリフォルニア州では、事実婚関係の宣誓書(Declaration of Domestic Partnership)を総務長官(the Secretary of State)に届け出ることができます。
日本との比較
日本の厚生年金では、事実婚も法的な婚姻と同等に扱われます。離婚時には厚生年金保険の分割制度というものがありますが、ソーシャル・セキュリティは老齢年金の分割という制度ではなく、離婚しても配偶者年金、遺族年金についての配偶者としての受給資格を維持するという方式になっています。また、日本の年金分割は婚姻期間中の厚生年金記録に限られますが、ソーシャル・セキュリティは婚姻期間中の元配偶者の所得実績に限定されないという特徴があります(婚姻期間中に限定する場合より多くなる)。そういう意味では、10年という婚姻期間を満たせば、離婚した場合の受給額はソーシャル・セキュリティの方が手厚いと言えるかもしれません。